【第3回：トランジット】感想レポート… ノエルティル心理占星術 第二部 by M.Sさん

第2回で、ティル式の場合は進行法に「1年1日法」のセカンダリー・プログレッションよりも、ソーラーアーク・プログレッションを重視するということを勉強しました。

今回学ぶトランジットは進行法と違って実際の天空での天体配置ですから、「○○法」も「××法」もなく、三重円の一番外側にその時の天体配置を出すことには、通常の占星術と変わりありません。

ただそこはやっぱりティル流。このトランジットについても情報の扱い方に特徴があって、それは着目ポイントを絞り込んで「人生を動かす変化を生み出す天体接触を抽出するところ」でした。

それも限りなく「人生を動かす変化を生み出す天体接触“だけ“」に近いニュアンスの選り分け方です。そのため、早い天体のトランジットはもちろん、実際の変化に繋がりにくいソフトアスペクトは最初から除外。（大胆！）　影響が長期に及ぶ土星～冥王星のハードアスペクトメインで見ていきます。

かといって、決して内惑星やソフトアスペクトを否定しているわけではないようです。ソフトアスペクトを取り上げないのは単にソフトアスペクトが変化を引き起こすよりも現状を維持したがる性質が強いためで、「変化を生む/変化を生みにくい」というラインでスパッと区切り、そこでセーブできたリソースを別のより重要なチェックや洞察、コンサルテーションの対話の準備に回すということなのだと思います。

なんとも実効性重視であり、プロフェッショナルな実践家向け。何十年にもわたり何万ものコンサルテーションを行って自分のスタイルを構築したノエル・ティルらしいメソッドだなと思いました。

ホロスコープの要点の整理という点では、ティル流の分析表記法も本当にうまく出来ていて、決して簡単ではない「統合的な理解」のために考慮すべきポイントを明快に書き出せるので感心します。これ、じつは脳のリソースを無駄遣いしない整頓術でもあるんですね。

ティル先生の本を拾い読みしていた時にはアングルへの矢印と丸で囲まれた数字がティル先生の自筆で書き込まれたホロスコープの図を見て「なんとなく」わかったつもりになっていましたが、その記号の背後にある思考の工程を知り自分で使うようになった今、これらが思っていた以上の仕事をしているのを理解しはじめています。

セミナーはまずティル式の占星家必携の「天文歴早見表」の使い方からはじまり、アングルへのトランジットの重要性、土星や木星、トランスサタニアンのサイクル、個人天体への接触の影響などについて触れて・・・というと普通の初歩的なトランジット講座のようですが、ティル式ではそこで起こるイベントと個人の内面のダイナミクスや欲求とを関連付けて理解していくのが新鮮です。

実例として御本人の許可を取ったサンプルで新里先生が時期予測の流れを見せて下さいましたが、ティル式心理占星術を使う占星家が何をピックアップし、頭の中ではどのようなプロセスが進んでいくのかがわかって大変興味深かったです。

この中で「教科書に載っているようなクックブック的な意味は現場の実際のコンサルテーションではあまり通用しない。」「その人が今どういう経験をしているかを把握し、今こう言う風に見える時期表示がその人にとって何を意味しているのか考える必要がある」という趣旨のことをおっしゃられていて、確かにその通りだなと思いました。

もちろん、これまで学んできたソーラーアークやミッドポイント、トランジットと出生図との接触に、相談者の過去から現在に至るストーリー、そして近い将来の流れが驚くべき精度で表示されているのも確認できました。

テキストはいつもながら要点が簡潔にまとめられていますが、今回とりわけ素晴らしかったのが、新里先生がティル先生の言葉に基づいて作ってくださったという「土星以遠の天体から個人天体へのトランジット：解釈例と簡易キーワード表」です。

トランジットで起こり得る具体的な出来事を羅列するクックブック形式とは異なり、こちらはそれらの天体の接触の性質・本質を短いキーワードになっていて、ここをしっかり把握できていれば「クライアントさんの状況に起こりうる具体的な出来事」を推測する心強い助けとなってくれそう。

こういうのはティル先生の実際のコンサルテーションを近くで数多く見て来られた新里先生の講座ならですね。今回も楽しく勉強させていただきました。

（M.Sさん、50代、占星術師）